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貸し会議室「ビジョンセンター」不当雇い止め裁判報告

貸会議室「ビジョンセンター」を経営するサンフロンティアスペースマネジメント株式会社で、組合員への不当な解雇を撤回はしたものの、不当解雇の意思に基づく契約期間満了に伴う雇い止めについての地位確認請求事件の判決が、横浜地裁にて3月29日に出されました。

判決の内容は、周知もされていない就業規則を有効とする内容や、組合員はフルタイムで働いているにもかかわらず、「正社員とは異なり被告からの給与のみで生計を維持することが前提とされていない柔軟な雇用形態」を理由として雇用継続の期待はないとする不当な判決でした。

裁判闘争の詳細は前回の記事を参照ください。労評は現在、控訴審に向けて準備しています。

リンク:本日、横浜地裁で判決!貸し会議室業界で起きた非正規労働者の不当解雇と雇い止め問題

 

主   文

1 被告は、原告に対し、50万円及びこれに対する令和3年5月10日から支払い済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は、これを13分し、その2を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

 

この判決は、原告組合員の労働者としての地位を否定するものであり、一方で「会社もちゃんと(雇用契約書の更新)手続きをしていなかったことは悪いよね」という主旨で、満額の慰謝料を認めておきながら、地位確認は認めなかったというチグハグな判決文には、一体どのようなことが記載されていたのかについてお伝えします。

また、「アルバイト」という概念に対して非常に偏った認識を持っていることが判決文からよくわかります。

 本件貸会議室事業において、配置すべき従業員の数は予約状況に応じて変動し、労働者の労働時間も、これに応じて変動することが予定されているところ、毎月の給与と労働時間を保障する必要がある月給制の正社員のみで貸会議室を運営することは容易ではなく、被告は、柔軟な人員配置を行うため、最低限の労働時間を保障しない時給制のアルバイト従業員に勤務させていたというべきである。

 被告のアルバイト従業員は、収入が少なく、不安定である反面、他の仕事と兼業することも認められ、シフト作成時には、家庭の事情や、兼業との兼ね合いで、予め休みや早番遅番の希望を出すなどの調整も可能だったものであり、正社員とは異なり被告からの給与のみで生計を維持することが前提とされていない柔軟な雇用形態であった。本件雇用契約の契約期間が比較的短期間である1年間とされてきた主旨は、このような使用者側と労働者側のニーズの合致からも説明が可能なものである

 

同一労働同一賃金が働き方改革関連法として導入されている現在において、「アルバイト」という、サンフロンティアスペースマネジメントが設定した呼称を理由としていること、シフト変更は事実上強制であり、そのような事実に基づかない反動判決であることは間違いありません。

被告会社にはフルタイム勤務で1年契約の「契約社員」枠で働くスタッフもいます。原告は時給制ということで「アルバイト」と呼ばれていました。しかし実態については仕事内容が全く同じであり、時給制、月給制の区分の違いのみで雇用継続の期待が認められないというのはおかしな話なのです。

言い換えれば、呼称は企業が自由に決められるものであって、形式主義的に「アルバイトだから雇用継続に期待はない」とした判決はフルタイム勤務で会社に貢献してきた労働者として不当極まりない判決なのです。

契約期間管理の状況について、判決文には以下のように示されていますが、この事実を認定しながらも雇用継続の期待は認められないとしています。

ア 本件雇用契約の雇用契約書は、入社時に作成された平成30年1月5日付け雇用契約書と、転籍時に作成された令和元年5月11日付け雇用契約書の二通であり、平成31年1月5日及び令和2年5月11日の雇用契約時には、雇用契約書は作成されていない。また、被告は、契約更新を検討するにあたって、音道常務が面談をしていたと主張し、音道常務はこれに沿う供述をしているものの、面談を実施した事につき客観資料による裏付けはない。 また、被告は、原告に対して、契約条件が不利益に変更されない限り、雇用契約書を作成する必要はない旨回答するなど、使用者に契約期間をはじめとする労働条件を労働者に明示する義務があること(労働基準法15条参照)についての認識が希薄であり令和2年9月に交付した労働条件通知書には原告の雇用期間を誤って記載するなど、被告が原告の契約期間を正確に把握していたか否か疑わしい事情も認められる

イ もっとも、原告は、令和2年5月以降、被告に対して繰り返し雇用契約書の作成を求めているところ、被告は契約書を作成しない理由を説明するに当たって、自動更新や当然更新であるなど、雇用継続に期待を抱かせるような説明は行っておらず、原告はむしろ契約更新がされないのではないかと不安に感じて、複数回上司Aに相談していた。このような経緯に照らせば、少なくとも令和2年5月11日の契約期間更新についての手続は、契約書の作成はなかったものの、原告に契約更新の期待を抱かせるようなものではなかったというべきである。

雇用継続に期待を抱かせるような説明は行っておらず」としていますが、実際には原告が雇用契約書の作成を求め続けたところ、上司が雇用継続に関する説明をするために、わざわざ原告の自宅(勤務先とするかどうか)近くの喫茶店まで出向き、以下のように説明があったのです。

 上司「紙の契約書はなくても、A(原告)さんは働いているじゃないですか。その実態が大事なので、(雇用が)継続していると思ってもらいたかった。自動更新と思ってもらって構わない

このような説明を受けて、果たして雇用継続に期待がないと言い切れるでしょうか?この点も控訴審での大きな争点となります。

また、雇用契約書もまともに作成していないから、雇用期間もまともに把握していないということが事実認定されました。しかし、就業規則が周知されていないにもかかわらず就業規則が有効という前提で判決文が書かれていることは不当であり、労働基準法106条に定める就業規則の周知義務違反なのです。

このように、サンフロンティアスペースマネジメント株式会社に順法意識がないことは明らかであり、このような資本の親会社(サンフロンティア不動産)がプライム市場上場企業であるというから驚きと怒りが隠し切れません。

違法行為の自覚すらないサンフロンティア資本の労務管理の中で組合員が不安に感じるのは当然であり、不安を覚えたことを理由として契約更新の期待を抱かせる事実がないとする伏見英裁判官の判決は、不当判決以外のなにものでもありません!

この不当判決を受けて、今後の進捗は改めて報告致します。

最後に、原告から皆さんにメッセージを送ります。


 

この度、アルバイトという理由で不当な判決を受けました。

私を含め、非正規で働く人のほとんどは、上司とのトラブルで退職を余儀なくされてしまいました。

しかし、その上司は音道氏の管理下のもとで不可解にも昇進していることがわかりました。

部下とのトラブルが多く退職者を続出した上司を、スペースマネジメント資本は受け入れているのです。

上にゴマを擦り、下にパワハラをすれば昇進する企業です。

非正規労働者を人ではなく、シフトの自由が利く道具としてしか捉えていないことがよく分かります。

このような会社の体制で、貸し会議室「ビジョンセンター」が、お客様の立場にたった質の高いサービスを提供できるわけがありません。

これは一個人に起きた不当解雇ではなく、非正規と呼ばれる労働者に共通する問題として捉え、不当判決を正当に変えていきたいと思います。

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