トールエクスプレスジャパン 6月14日大阪地裁に提訴
残業代請求訴訟と記者会見
6月14日、労評トール広島分会の組合員9名は、会社が労働基準法37条の趣旨に反し、不法に時間外手当(残業代)を差し引いていることに対し、会社は発生した未払い賃金を過去二年間にさかのぼって支払えと大阪地裁に提訴しました。
提訴後の午後2時から大阪地裁司法記者クラブにおいて指宿弁護士、中井弁護士、労評の長谷川委員長、前堂大阪府本役員の4名で記者会見を行いました。各全国紙の記者(朝日、毎日、読売、産経)、共同通信社記者、各テレビ局が取材に来られ、活発な質問と応答が行われました。
記者会見では、原告の以下のコメントが読み上げられました。
「長時間働いても、そうでなくても、毎日(毎月)もらう給料にさほど差がないことに気がつきました。給与明細書に残業代を付けたように見せかけていることは明白な事実です。このようなインチキ、詐欺、と取れるような給与規則で、ドライバーを長時間タダ同然で使い、その反面、上司(経営陣)などは、多額の報酬を得ている。また、相変わらず人手不足の本当の理由もわからずにこの状況を続けようとしている」
トールで働く路線や集配で働くみなさんは、どんなに残業を多くしても、又少なくても時間外手当(A)と能率手当とを合わせた金額がほぼ変わらないことに「おかしい」と思っていたと思います。原告(労評組合員)のコメントは、まさに、とりわけ路線、集配ではたらいているトール労働者全体の思い、怒りを表現していると思います。
6月9日の団体交渉
6月9日の団体交渉で時間外手当の差し引きについて、結論として「現行通りとする」という回答だったので、「それなら司法の場、裁判で決着をつける」と返答し、今回の裁判に至りました。労評、及び労評トール広島分会は、今回の裁判はトールで働く労働者全体の利益のみならず、交通運輸で働く労働者全体の待遇を改善する裁判として取り組んでいます。
団体交渉において労評側から会社に対し、以下の問いただしを行いました。
①ご存知だと思うが、政府が今年2月に「改正物流総合効率化法案」を閣議決定し、最近それが施行された。この法の背景には、トラックドライバーの深刻な人員不足、高齢化問題がある。人員不足で日本の物流が維持できなくなり、日本の全産業に悪影響を与えるという危機感がある。
②このことは毎日毎日トラック運転手が働くことによって日本の物流が支えられ、日本の産業と国民の生活が支えられていることを意味している。交通運輸で働く労働者は、このように誇りある仕事をしている。
③しかし、トラック運転手は低賃金、長時間労働という過酷労働を強いられており、彼らの社会的労働は正当に評価されていない。
④低賃金、長時間労働となる原因としてトールと同様に歩合給から残業代を差し引く、あるいは歩合給に残業代が含まれているとして残業代を支払わない違法な賃金体系がまかり通っていることにある。だから労評は交通運輸の産業別労組をつくって、業界全体の改善問題として取り組み解決しなければならないと思っている。
時間外手当問題は、司法の場で決着をつけるが、人員不足問題、その背景にある低賃金、長時間労働について会社としてどう思っているのか。
会社からは「物流業の社会的地位を向上させなければならないと思っている」「会社も精一杯努力している」という一般的な答えが返ってきましたが、現在の賃金規則のままでトールの人手不足が解決できるのか、このことについてどれほど会社が真剣に考えているのかが問題です。