知っておこう! 年次有給休暇の計画的付与の問題点
労働者の権利である「有給休暇」。しかし、実際に取得する際、躊躇する方も多いのではないでしょうか
政府は、年次有給休暇の計画的付与を積極的に導入するよう指導しています。
労基法39条6項にも規定されていることですが、企業によっては社労士が中心になり、有給休暇の計画的付与の労使協定を提案するところも出てきています。
ここで改めて「有給休暇」について注意しなければならないことを確認していきましょう。
有給休暇は労働者が自由に使うことが原則
年次有給休暇は労働者が自由に行使できるものであり、いつ有給休暇を使うかは自分で決められるものです。
しかし、政府は年次有給休暇の消化率が低いことを理由に、労働者の持っている年次有給休暇の中から一定の日数を会社が強制的に消化させるような措置をとるように指導している。
その目安は、5日間は労働者が使えるように残しておかなければとしていますが、その条件を守れば、会社が与えたい時季に有給休暇を(一斉に)与えることが可能となっています。
年次有給休暇の計画的付与を導入が増える傾向に
最近、社労士などが企業に働きかけ、「政府の意向だから」などと言い、年次有給休暇の計画的付与を導入させる傾向が目立っています。
それを受けて、企業は夏季休暇と正月休暇として与えていた特別休暇を、年次有給休暇の計画的付与に切り替えてしまうような政策を打ち出すのである。
(例)
夏季休暇が4日間、正月休暇が5日間あったします。
そのうち夏季休暇で2日分、正月休暇で2日分、合計4日分の有給休暇の計画的付与をするようにします。
すると、労働者の休日数は変化がないが、会社が与える特別休暇分は差し引き夏季休暇で2日分、正月休暇で3日分となり、労働者は自分の有給休暇を4日分減らされることになります。
これは有給休暇の消化率を高めるのではなく、今まで会社が与えていた特別休暇を減らして労働者から有給休暇を取り上げることになるのです。
このように、企業はいつでも利潤を上げることに血道をあげているので、会社が暇なときに有給休暇を消化させよう、特別休暇を減らして有給休暇消化に切り替えようと、労働者の権利を侵害する目論見をもって提案してくるのです。
労使協定が必要であり、組合は必ず関与しなければならない
この計画的付与は、労使協定を締結しないと執行できません。
つまり、過半数以上の組合員のいる分会では本部と相談して拒否するかどうかを決めればいいことになります。
過半数の労働組合のない場合は、労働者代表を選んで合意を得る必要があるので、議論の場は持たなければならないのです。
まとめ
年次有給休暇の計画的付与は気を付けないと労働条件の不利益変更にもつながる危険性があることはお分かりいただけたのではないでしょうか。
入社間もない労働者の場合、年次有給休暇は10日~12日程度ですから、4日間強制的に消化されたら実際に自分で使える有給休暇の日数は6日~8日になってしまいます。
見落とされがちな問題ではありますが、少しでも不満がある場合、職場で議論を起こして労働者の権利意識を高めてだまされないようにことが大切です。
また、友人や知人の職場で有給休暇の一斉付与がされている場合は、労働者が不利になっていないかをよく聞いて、アドバイスをしてあげましょう。