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【筑波大分会】 団体交渉で暴露された矛盾 (大学教員の「定額働かせ放題」問題 第3回)

「大学教員の『定額働かせ放題』問題」シリーズ、第3回です。

前回は、「定額働かせ放題」の根拠である裁量労働制を拒否することによって出てきた具体的な問題と、それについて団体交渉申入れをしたことを報告しました。

今回は、実際の団体交渉でのやり取りについて報告します。

 

5 団体交渉でのやり取り

前回報告したように、団体交渉申入れをして、大学に対し、以下の点を議題とすることを求めました。

 

(1)ア 研究業務について、在宅で時間外ないし休日勤務を行うことを認めよ。

イ 裁量労働制下で、事実上「裁量」で教員が時間外・休日に研究業務を行うことが常態化している実態について、大学はどう考えているのか。

(2) 科研費申請の時間についても「個人の研究活動」であり、時間外勤務としては認められないという系長の回答について大学としてどう考えるのか。

 

これに対する団体交渉席上での大学側からの回答と続くやり取りは、おおよそ以下のようなものでした(※1)。

 

(1)ア 研究業務について、在宅で時間外ないし休日勤務を行うことを認めよ。

大学の回答(事務)

「その他業務関連上やむを得ないとき」(労使協定)に本来業務としての研究業務は該当しないので、時間外・休日勤務を命ずることはできない。業務全体で調整し、勤務時間内で研究業務に従事していただきたい。研究時間については工夫して確保することも可能かと思うので、教育や校務との調整は系など関係組織と調整していただきたい。

組合

〇 すきま時間にやりなさいと言うことですか。

大学

 〇 すきまではなく、あいだの時間でやってください。

 〇 やりくりは時間外ではなく、(業務時間内で)調整してやっていただきたい。

組合

〇 前任の系長との事務折衝で既に調整は試みた。定められた業務時間内でできる妥当な仕事量にしてくださいと言いましたが、結局そうしてもらえなかった。

〇 一日3時間でいいから研究させてくださいと言っているんです。3時間も机に向かって研究できないのですか。

大学(系長)

〇 分かりました、秋学期や来年度、2時間研究時間を確保できるように、業務負担を減らせるように調整します!

 

(1)イ 裁量労働制下で、事実上「裁量」で教員が時間外・休日に研究業務を行うことが常態化している実態について、大学はどう考えているのか。

大学の回答

 〇 裁量労働制については業務の遂行手段、時間配分は労働者の裁量に委ねられている。勤務時間のほとんどが教育・管理業務で占められていて研究が行えないという実態があるのであれば、やはり同様に割合を変えて調整するということが必要になってくるのかなと思います。

組合

〇 前提としてこのようなことが「常態化している」という認識はお持ちですか。

大学(事務)

 〇 「常態化」とはどういう意味なのか。先生方がどういう形で勤務しているのか、全てを把握していないので、常態化しているかということについてお答えするところは持っていません

 〇 調査していないので、仮定のお話しには答えられないということです。

 

 

(2) 科研費申請の時間についても「個人の研究活動」であり、時間外勤務としては認められないという系長の回答について大学としてどう考えるのか。

大学(系長) 

 〇 やはり、個人の研究活動であり、科研費申請のために時間外勤務は認められないと考える。

組合

〇 間接経費(※2)の使い道を知りたい。どこに聞けばよいのですか。

大学(副学長)

 〇 間接経費は非常に自由度が高く、色々な使われ方があるが、私は財務担当でもなく、細かく追跡するのは極めて困難。ですが、典型的で分かりやすいものを挙げるのなら、電子図書費。電子ジャーナルは高騰が甚だしく、科研費の間接経費がなくては支払うことができないくらい。

 〇 大学が科研費獲得を奨励している背景としては、他には国が各大学に運営費交付金を配分するときに傾斜配分(大学間で交付する額に差をつけること)するが、その指標の一つに科研費の採択率が使われている。科研費を取ればとるほど、文科省から降りるお金が増える仕組み。

 〇 ほかにもさまざまな大学間のランキングを決めるときの指標として使われるし、また、数多くの研究の外部資金(競争的資金)がある中で、全ての学問分野をサポートするのが恐らく科研費しかないというのもある。

組合

〇 つまり、科研費からの間接経費は大学の運営にとって重要な位置を占めるだけでなく、科研費獲得が大学全体に貢献している部分はかなり大きい。やはり科研費獲得のための作業は「個人の研究活動」とは言えないのではないですか

大学(副学長)

 〇 科研費は、筑波大にふさわしい研究のレベルを保っていくためにも必要。全ての研究者が取ることができ、逆に取れないと悲惨。だとしても、個々の先生の研究のレベルを上げるという目的が本来であり、ひいては大学のレベルも上げる。そういうことだと思う。

組合

〇 科研費は個人の研究のためのものという大学の建前は分かったが、その建前は実態に即していないと思う。

 

 

今回はここまでです。

いかがでしょうか。大学側の回答は、矛盾と無責任に満ち満ちていないでしょうか。

裁量労働制による「定額働かせ放題」のもと、大学教員は底なし沼のような長時間労働にはまり込み、かつ、研究者なのに自らの研究時間すら確保できないのです。

また、大学側の言うところを聞くと、科研費獲得は複数の意味でもはや大学運営に欠かせないものになっていることは明らかです。

にもかかわらず、大学はあくまでもそれは「個人の研究活動」であり、それをするために残業命令を出すことは認めないという立場に固執します。なんとも茶番めいた一幕ではないでしょうか。

 

今回の団交で表れた矛盾は、現在の日本の大学行政の矛盾を凝縮したものとしてあります。この点について、次回の最終回でまとめたいと思います。

来週更新します。

 

 

※1 2回にわたる団体交渉のやり取りを編集したものです。

 

※2 競争的研究費(科研費もこれに含まれる)の間接経費について、文科省のサイトは「直接経費に対して一定比率で手当され、競争的研究費による研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費として、被配分機関が使用する経費です」と説明しています。要するに、科研費は研究者個人が申請し獲得するものであるが、その一部は「間接経費」として所属機関(大学や研究機関など)のに充てられ、その管理・運営のために用いられる、ということです。https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/torikumi/1337573.htm

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