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【日本交通分会 】第6回団体交渉報告


 

(東京・紀尾井町 日本交通株式会社本社)

 

2021年4月26日、日本交通分会第6回団体交渉が行われました。
参加者は資本側から顧問弁護士、本社管理部部長2名、三鷹営業所所長、三鷹営業所次長の計5名。

組合側から顧問弁護士、労評役員2名、分会長、分会書記長の計5名でした。

またしても不誠実回答
「スタンド制限の長期的メリットについて説明する義務は無い」

日交資本は燃料費削減のため、価格の安いスタンドを指定して、そこ以外では給油しないよう乗務員に指導しています。

しかし、指定スタンドが営業所や繁華街から遠い場所にあるため、乗務員からは「仕事の効率が悪くなってトータルコストではマイナスになっているのでは?」と疑問の声が上がっています。当労組はそのことを検証するため、総走行距離や総給油量など7項目にわたるデータを、スタンド指定の通達を出す前後に分けて抽出するよう要求しています。

日交資本は「出せるデータについては出す」と一旦は約束しましたが、前回の団体交渉では「取引先に迷惑がかかる」と前言撤回し、取引先とは全く関係のないデータも含め、一切のデータの抽出を拒否しました。それが今回の団体交渉では一転、会社にとって都合の良いデータだけを口頭で説明し、「燃料費は削減できている」と主張。組合は「関連データも出してくれないと検証できない」と反論しましたが、「労働組合が会社と一緒に検証してくれなくてもよい」「延々と話しても答えは出ない」など、まともに答えもせずに開き直る始末でした。

また、組合が要請していた「スタンド指定の真の目的は乗務員の自腹給油にある」ことを立証するための実態調査についても、「指定スタンドで給油しないわずか1%の乗務員のために、全ての乗務員を対象としたアンケート調査をすると、他の乗務員の迷惑になる」と、まるで99%の乗務員はスタンド制限を支持していると言わんばかりの回答。

組合が妥結案として示した「帰庫時に燃料が半分を下回っていた場合は、会社に連絡することを条件に、指定スタンド以外で10Lまで給油しても良いとすること」および、「会社と連絡が付かない(会社から折り返し連絡が無い)場合は、事後報告でも良いとすること」についても、「都心で給油すれば問題ない」「満タン返しでなくても良い」「帰庫時に半分下回っていた時の10Lまでの給油は今でも認めている(帰庫遅れしそうな時だけ認めている)」「折り返し連絡を徹底しているため、事後連絡は認めない」と、一歩も譲歩する姿勢を見せませんでした。やむを得ず組合側が譲歩し「事前連絡はワン切りでも良いか?」と提案しましたが、「職員がすぐに対応できない場合がある」と、折り返し連絡の徹底が出来ていないことを自ら認める発言をすると、「これは乗務員に便宜を図るかどうかの問題だ」と、ついに本音を漏らしました。

資本は、スタンド制限の施策は経営判断だから労働組合が口を挟む問題ではないとの立場を維持するつもりのようですが、労働者に負担を強いるのであれば、経営判断の合理性について説明する義務があります。それが労働組合法第7条2号に規定された誠実交渉義務というものです。引き続き、資本に対しデータの抽出と自腹給油の実態調査を求めていきます。

 

乗務員の経費負担問題は改善する気なし!

国土交通省は「タクシー事業に要する経費を乗務員に負担させる慣行がある場合は改善すること」との通達を出しています。

また、第185回臨時国会でも同様の付帯決議が衆参両院で可決されています。

当組合は、これら国の方針を資本に示すとともに、長年放置されてきた「乗務員の経費負担問題」を改善すべく、次の3つの要求を資本に提出しています。

1. 乗客に嘔吐された際の処理負担について

組合側要求
『 乗客が嘔吐して営業を中断した際は、三か月分の平均営収を中断した時間分補償すること。また、営業に復帰できなかった際は、三か月分の平均営収との差額分を仮想営収として補償すること。』
この要求の趣旨は次の3つ。
① 清掃時間はタイヤが止まっているため、システム上、休憩時間としてカウントされてしまう。また、残業時間は修理手当が支払われない。所定時間内なら基本給で対応しているが、所定時間外(残業時間)については労働時間として認めないということなのか?この点について、会社側の見解を述べること。
② 嘔吐され仕事が出来ないのは、仕事をする意志があっても出来ない状態である。後始末をしなければならず、そのままの状態で次の人に渡す訳にはいかない。必要な処理を終えるまでは労働時間としてカウントしなければならず、カウントしない現在の取り扱いは、労働基準法上問題があるのでは?労務を提供しているのだからそれに対する賃金は支払うべきだ。(公出や適用除外※の場合、清掃中はタイヤが止まっているため休憩時間扱いとされてしまう)※最低ノルマ(足切り)未達のこと
③ 本来なら乗客が原状回復しなければいけないところ、会社が免除しているのだから、乗務員にツケを回すのは理不尽である。免除した原状回復費用は会社が全て負担すべき。

会社側回答
『 普通は所定内と所定外で区別している。所定内は労働義務があるため面倒は見る(修理手当は付ける)。所定外については自分の意思に基づいて労働するのだから、営業機会の損失について会社に責めがある訳ではない。そこは申し訳ないけど我慢してもらうしかない。そんなに頻繁にある話ではない。ましてや緊急事態宣言下ではなおさらだ。もし、あった場合は申告してもらえれば、たとえ残業時間帯であっても、清掃に要した時間は労働時間としてカウントする。』
この回答を噛み砕いて説明すると、「会社は残業や公休出勤を強制しているわけではない。嘔吐のリスクを負うのが嫌ならやらなければ良い」という意味です。これでは、国の方針である「タクシー事業に要する経費を乗務員に負担させる慣行がある場合は改善すること」を検討したことにはなりません。清掃に要した時間を労働時間としてカウントする点については評価できますが、私たちの要求はあくまで「損失補填」です。次回も引き続き議題として取り上げます。

2. 通信費の負担について

組合側要求
『 乗客と乗務員の個人情報の保護ならびに、事業に必要な経費を労働者に負担させる悪しき慣習を改善するといった観点から、会社側で乗務員との通信手段を確保すること。』

会社側回答
『 通信費はサラリーマンの必要経費である。また、現在は折り返し連絡を徹底している。忘れ物があったときの乗客と乗務員の個人情報の保護という点については、あくまで了解してくれた乗務員についてだけお願いする。困るという乗務員については、その場で乗客に届けるのではなく、営業所に持って帰ってきてもらって事後対応ということをやっている。乗客と連絡を取り合ってすぐに届けろというような強制はしていない。』

資本は、サラリーマンだったら通信費ぐらい負担するのは当たり前だと考えているようですが、まともな企業は情報漏洩対策として従業員にスマートフォンを貸し出すのが一般的です。また、乗務員に報告義務を課している以上、報告に際して必要な通信手段は会社が用意すべきでしょう。当面の対応としては、会社に「ワン切り」をして、折り返し連絡を待つしかなさそうです。
引き続き対策を検討します。

3. 帰路高速通行料の自己負担分について

日本交通では、乗客を遠方にお送りした帰りに高速道路を使用すると、通行料の一部を乗務員が負担しなければいけないケースがあります。当組合は、その際に負担した通行料について、領収書を発行するよう資本に要求しています。

組合側質問
『 乗務員が負担した帰路高速代の領収書は、なぜ発行できないのか?
なぜ民法486条が適用されないのか?法的根拠を説明すること。』

民法第486条(受取証書の交付請求)
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。

会社側回答

『 民法486条は適用されると思う。ただ、現状をチェックしてみると、これまで「領収書を発行してください」という乗務員は皆無であることから、事実上「領収書はいらない」という黙示の合意があったと認識している。特段、違法なことをやってきたことも無い。今後の対応については、以前、組合側から「確定申告している乗務員もいるのだから、そういう乗務員のために領収書を発行してほしい」という要請があって、それが現実的に可能かどうか検討したところ、それに応じる理由は無いとの結論に至った。理由についてだが、まず、税務申告上、これだけのために領収書は必要ないと思われる。そのため、領収書を発行しないからといって、直ちに不当ということにはならないと考えている。仮に、確定申告をした税務署の方で何か調査が来た場合には、個別の対応として、過去そのような帰路高速の会社への支払いがあったのかきちんと調査して回答するので、ご懸念無きよう。今後の対応としては、領収書の発行が必要無いことを前提とした制度に、賛同してもらえる乗務員にETCカードの利用を許可していきたい。

 

回答の最後にある下線部分は、「今後は、領収書の発行を要求する乗務員にはETCカードを使わせない」という意味です。この発言は「民法を盾に領収書を要求する乗務員には不利益な取り扱いをする」と脅していることに他なりません。

資本は「帰路高速でETCの利用を認めているのは便宜供与にすぎず、領収書発行の手間など掛けたくないからだ」と反論していますが、配偶者が家計簿をつけている家庭では領収書は必須です。領収書が無ければ遊興費とみなされ、こずかいから出費する羽目になります。

民法に従い行動しない日交資本を皆さんはどう思われますか?

 

労基法違反の就業規則を撤廃しない経営陣

日交資本は多数派労組と結託し「10分以上の停車時間を休憩時間とする」との規定を就業規則に追加しました。しかし、この規定に則って労働時間をカウントすると、本来労働時間であるはずのタクシー乗り場や修理工場での待機時間が休憩時間としてカウントされていまい、不当に賃金が安くなります。この件は他労組も問題視していて、厚生労働省との交渉のなかで取り上げています。当局の見解は次の通りです。
「停車時間を一律に労働時間から除外して休憩時間とするのは認められない。休憩は労働から解放されていなければいけない。実態を見て判断し、労働時間を除外する仕組みがあれば直すよう指導を強化していく。」
当組合は、この見解を今回の団体交渉で資本に伝えるとともに、「規定の撤廃」と「休憩ボタンの導入」を要求しました。しかし、資本は「労基法に抵触する認識が無い」と回答。その理由として「地域、地方によって、お客さんの数や流れは全く異なる。東京のタクシー業界においてこの10分ルールというのは、適正な労働時間のカウント方法の一つとして十分許容範囲内である」と、労働時間を把握する必要性があることを挙げました。
この件については、色々と話し合いましたが平行線で進展が見られなかったため、持ち帰って、当局に指導要請する方向で検討することにしました。

 

未払い賃金に待ったなし!崖っぷちの日交資本が取った驚きの行動とは?

・公出手当の未払いについて
資本は前回の団体交渉で公休出勤時の賃金について未払いがある事を認め、労評員に対しては差額分を支払うと約束しました。そして今回、キッチリと根拠を示して回答して頂けるものと期待していたのですが、ふたを開けてビックリ。単純な計算ミスに加え、深夜割増分の計算漏れなど、引き伸ばすためにワザとやっているとしか思えない初歩的ミスの連続。やむを得ず、次回迄の宿題ということにしました。

・洗車時間分の賃金未払いについて
組合側要求・質問
① 組合が提供した、「終業時間の20分で納金と洗車ができるかを検証した映像」について感想を述べること。
② 本来、支払わなければいけない洗車時間分の賃金が未払いとなっているが、請求した乗務員に対しては支払う意向はあるか?
③ 「会社が洗車業者に支払う洗車料金を全額負担し、乗務員は洗車をせずに納金作業だけして帰ること」について、検討してもらえたか?

会社側回答
① 組合が提供した映像については、時間が無かったため観ていない。
② 終業時間の20分で納金と洗車ができていると思っているため、未払いは無いと考えている。
③ 未払いは無いと考えていることから実施しない。

資本は、終業時間の20分で納金と洗車ができると思う根拠について、次のように回答しています。
『 過去に労基署の監査に入られた際にこの件を指摘された。その際、乗務員にアンケート調査を行ったところ、ほとんどの乗務員が20分で納金と洗車ができていると回答した。その調査結果を労基署に提出し、問題なしとの判断になった。』
この件に関しては、資本から「次回の団体交渉までに、実際に作業した映像を確認して何らかのコメントはする」と約束してもらいました。コメント次第では労基署に映像提出することになります。

自分に甘く労働者に厳しい日交資本

・決算を官報へ公告することについて
決算については、会社法で全ての企業に公告義務が課されています。そのため、たとえ日本交通が非上場会社であっても公告するよう要請しました。

・決済端末の故障や乗り逃げの際の補償について
決済端末の故障や乗り逃げなどで乗客から料金を受領できなかった際の補償については、資本が頑なにルール化することを拒否したため、引き続き交渉していくことにしました。

・新型コロナウイルス対策について
コロナに感染すると重症化しやすい高齢者や持病持ちの乗務員には、働くか、雇用調整助成金を活用し休業するか、本人に選ばせることを要求しました。しかし資本は、前回同様、無線の配車率が落ちることを理由に拒否。人命軽視の経営姿勢を貫くようです。

 

日本交通の搾取構造を崩す!

日交資本は御用労組と結託し人件費を削減することに余念がありません。退職金の廃止、帰路高速通行料の乗務員負担増、お年玉の廃止、ワイシャツ支給の廃止など枚挙にいとまがなく、今現在もN型賃金の改悪に勤しんでいます。本来、資本が負担すべき経費やリスクを全て労働者に押し付け、菜種油を絞るがごとく搾取する。それが日本交通の実態なのです。利益というのは、労働力を搾取せずとも労働効率を高めることで最大化できます。そして、確保した利益は、株主、企業、労働者で適正に分配する。それがエクセレントカンパニーのあるべき姿です。日本交通が企業買収して大きくなる一方で、労働環境が悪化しているのは、適正に分配していないことの現れです。
日本労働評議会に結集し労働者軽視の経営姿勢を改めるよう日交資本に訴えていきましょう。

次回団体交渉の日程は調整中です。

・団体交渉の詳細につきましては議事録をご覧ください。

労評日本交通分会第6回団交議事録

・次回団体交渉の議題も添付しました。新型コロナワクチン接種や選択型DCについても取り上げています。参考になれば幸いです。

労評日本交通分会 第7回団体交渉 議題

 


 

〇連絡先〇

日本労働評議会(労評)

TEL:03-3371-0589 FAX:03-6908-9194

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